「シーズン前に行う準備は?」
「板のワックス剥がしって?」
「バインのメンテナンスは?」
この記事では、スノーボード歴20年以上の現役インストラクターが、シーズン前のスノーボードの手入れとメンテナンスのコツを紹介します。
シーズン中に快適にスノーボードを楽しむためには、シーズン前の手入れとメンテナンスが欠かせません。
作業時間は、スノーボード1枚につき1時間半くらいです。
シーズン前にどんな準備をしたらいいか分からないという方は、ぜひ参考にしてください。
1.シーズン前の手入れとメンテナンスのコツを紹介
今回作業に使用した板とビンディングはこれです。
- 板:OGASAKA「CT」
- ビンディング:FLUX「RS」
私のホームゲレンデは、12月中旬から下旬にかけてオープンするので、準備は11月中旬~下旬に行います。
2.手入れとメンテナンスに使ったもの
作業に使用した道具を紹介します。
①板用
作業台
ダイソーで買ったレジャー用の折りたたみイス(110円)です。
楽に作業をするなら、専用の作業台や腰の高さの脚立をおすすめします。
ワクシングアイロン
ホットワックス用のアイロンです。
スプレー式の簡易ワックスは何もしないよりマシですが、ワックスの持ちを良くしたければホットワックス一択です。
滑走ワックス
板のソール(滑走面)に塗る滑走ワックスです。
今回は、GALLIUM(ガリウム)の滑走VIOLETを使用しました。
全雪質対応のもっともポピュラーな滑走ワックスです。
ワクシングペーパー(キッチンペーパー)
滑走ワックスを塗るときに、アイロンとソールの間に挟んで使います。
ワックスの伸びが良くなり、アイロンの熱からソールを保護してくれます。
スクレーパー
ホットワクシングの後に、余分なワックスをはぎ取ります。
スノーボードの横幅と同じくらいのサイズ(幅28cmくらい)がおすすめです。
ナイロンブラシ
スクレーパーで剥がし切れなかった細かい溝の余分なワックスをかき出し、滑走面を磨きます。
フィニッシュクロス
素材がしっとりしており、ブラッシング等で発生したワックスの粉をしっかり吸着してくれます。
静電気も除去してくれます。
ファイバーテックス
最終仕上げ用です。
最後にこれで磨けば滑走面が輝きを放ち、ワックスの効果や持続力が高まります。
ソールカバー(ニットカバー)
ワックスをかけた後に板にかぶせ、滑走面やエッジを保護します。
シーズン中もオフのときも常に使用しています。
②ビンディング用
作業台
先ほど紹介したのと同じです。
ドライバー
ダイソーで買ったラチェットドライバー(220円)です。
ラチェット付きのためドライバーを持ち替える必要がなく便利です。
③板とビンディング
シーズン後に片付けて保管していた板とビンディングです。
この後は、ベースワックスを厚塗りした状態で保管されていたことを前提に説明します。
まだ読まれていない方は、片付けと保管方法のコツを紹介した過去記事をご覧ください。
3.板のホットワクシング
板のホットワクシングの手順を説明します。
①ベースワックスを削る
シーズン後にソールの保護用として厚塗りしたベースワックスを剥がします。
ソールカバーを外し、滑走面を上にした状態で作業台に置きます。
全体的に白っぽくなっていますが、ベースワックスを厚塗りしていたためです。
スクレーパーで余分なベースワックスを削ります。
撮影のためスクレーパーを片手で持っていますが、実際は両手で持ってノーズからテールに向けて一方向に動かします。
ノーズとテールのキック部分(両端の反りあがっている部分)は後でまとめて作業します。
大量の削りカスが出ました。
スクレーパーにワックスの削りカスが付着したら、ナイロンブラシなどで取り除きながら作業します。
まだベースワックスがかなり残っています。
ここでいったんスクレーピングを終了して、今度はナイロンブラシでワックスをかき出します。
ナイロンブラシをかけるときもノーズからテールに向けて一方向に動かします。
ワックスの粉が浮き出てきました。
このように細かいワックスの粉はフィニッシュクロスで拭き取ります。
フィニッシュクロスの生地にしっとり感があり、粉が舞い上がらずにしっかり吸着できます。
次はノーズとテールのキック部分のワックスを削ります。
キック部分はカーブ形状になっていて削りにくため、角度を変えながらスクレーピングします。
滑走面と同じように、キック部分もナイロンブラシとフィニッシュクロスで仕上げます。
最初よりはきれいになりましたが、余分なベースワックスがまだ残っているようです。
スクレーパーとナイロンブラシをもう一度かけた後の状態がコレです。
これで下地が整いました。
②滑走ワックスを塗る
次は、ワクシングアイロンを使って滑走ワックスを塗ります。
ベースワックスだけでも滑走できますが、フッ素入りの滑走ワックスを入れると、日本の湿った雪でも快適に滑ることができます。
ベースワックスの上に滑走ワックスを塗ることで、ホットワクシングの効果が格段にアップします。
まずはアイロンの温度を100℃~120℃に設定します。
設定温度に達する前の温かいアイロンに滑走ワックスを当て、柔らかくしながらソール全体に直塗りします。
滑走ワックスが程よく溶けて柔らかくなるため、滑走面に簡単に直塗りできます。
ソール全体に滑走ワックスが行き渡りました。
なお、アイロンの設定温度は、ワックスを当てたときに煙が出ない範囲で高い温度に設定するのがおすすめです。
アイロンが設定温度に達したら、滑走ワックスをソールに塗り込んでいきます。
アイロンと滑走面の間にキッチンペーパーを挟み、アイロンを止めず滑らせるようにワックスをのばします。
アイロンを動かす方向は、ノーズからテールに向けて直線です。
アイロンの幅がボードの幅より狭い場合は、真ん中、上、下など3ブロックに分けてワクシングします。
ペーパーを間に挟むと、熱による滑走面の焼き付け(痛み)を防ぎ、ペーパーが余分なワックスを吸い取ってきれいに仕上がるなどのメリットがあります。
滑走面が終わったら、ペーパーに浸み込んだワックスを使って、ノーズとテールのキック部分をワクシングします。
カーブ形状に沿うようにアイロンの角度を変えながら、滑走面にかけたワックスとつなげるように行います。
これで滑走面全体にワックスが行き渡り、見た目もきれいになりました。
③滑走ワックスを削る・磨く
板が常温まで冷えたら、次は余分な滑走ワックスを削り取ります。
ベースワックスと同様に、ノーズからテールに向けて一直線に滑走ワックスを削ります。
ナイロンブラシで丁寧にブラッシングを行い、フィニッシュクロスでワックスの粉を拭き取ります。
最後の仕上げとして、ファイバーテックスで滑走面を磨き上げます。
ファイバーテックスで磨くと、滑走面が輝きを放ちます。
作業前の写真と比べると違いが一目瞭然です。
このまましばらく使用しない場合は、ソールカバーをかけて保管します。
近いうちに使用する場合は、次の工程(ビンディングの付け方)に進みます。
4.ビンディングの付け方・確認
ホットワクシングが完了した板にビンディング取り付けます。
①ビンディングの取付け
自分のスタンスに合わせてアングル(角度)を調整し、ディスクプレート(丸い円盤)をベースプレート(ビンディング本体)にセットします。
最初は対角線上の2本のネジ(ビス)だけを仮止めします。
※仮止め:ボードの持ち運びや車の振動でネジが外れない程度の強さで締めておくこと。
きつく締めたまま保管すると、板に強い力が加わって変形や破損の原因になります。
ビンディングの幅や角度、センターリングに問題がなければ、残りの2本のネジも仮止めします。
仮止めの状態のまま保管し、後は滑る前日か当日にネジをしっかり締めるだけです。
②ネジのゆるみチェック
ビンディングの各パーツのネジにゆるみがないか確認します。
板にビンディングを取り付けて固定した状態で行った方が作業が簡単です。
FLUX(フラックス)のビンディングは、指でつまみを起こして時計回りに回すだけです。
FLUXのビンディングは、ドライバーがなくてもセッティングを調整できます。
今回は、念のためドライバーでも増し締めしておきました。
ビンディングを折りたたんで作業は終了です。
③車内に「予備のネジ」
滑走中はビンディングに強い力が加わります。
急にネジが外れるなど、思わぬトラブルに見舞われることがあります。
以前滑っていたとき、足元でブチっ!という音がしたかと思ったら、アンクルストラップのネジが外れてどこかに吹っ飛んでいました。
コース上の雪に埋もれた小さなネジを発見することはできず、結局その日は泣く泣く帰るハメになりました。
それからは必ず車に予備のネジを積んでおくようにしています。
私はFLUXのビンディングばかり使っているので、古いビンディングのネジやパーツを使い回すことができます。
これまで何度この予備のパーツに助けられたか分かりません。
5.おわりに
今回は、シーズン前のスノーボードの手入れとメンテナンスのコツを紹介しました。
実際にかかった作業時間は、ボード1枚につき約1時間半(滑走ワックスを冷ます時間を除く)です。
本数が多いと半日ががりですが、シーズン中に快適にスノーボードを楽しむために必要な作業です。
この記事が、シーズン前のスノーボードの手入れとメンテナンスに困っている人の参考になれば幸いです。
以下の記事では、シーズン後の板とビンディングの保管方法、ウェアを自宅で手洗い洗濯する方法を紹介していますので、ぜひご覧ください。
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