「かかと側のターンでズレる」
「エッジが抜けてすぐコケる」
「ヒールサイドのコツはある?」
この記事では、スノーボード歴20年以上の現役インストラクターが、次のことを紹介します。
ちょっとしたコツが分かればヒールサイドはズレなくなります。
この記事の内容を1つずつ実践すれば、ヒールサイドで板がズレたり、エッジが抜けたり、ガガガッとなってバランスを崩してコケることが激減します。
専門用語は使わずに分かりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.ヒールサイドがズレる理由
そもそもヒールサイドで板がズレるのは、人間の骨格上当たり前のことです。
決して自分の滑走レベルが低いわけではありませんので、ご安心ください。
ズレて当たり前という事実を受け入れた上で、まずはズレる理由を3つ説明します。
①背中側に滑る恐怖
1つ目の理由は、ヒールサイドは「見えない背中側に進む」という恐怖心から無理にボードを回そうとするからです。
人の目は正面にしか付いてないので、ターンのときに背中側を早く見ようと無意識に体をひねって振り向こうとします。
その結果、ボードが早く回り過ぎてテール(後ろ足)がズレるのです。
見えない方向に進む不安や恐怖心から上半身をひねるのは、心理的に当然のことです。
②目線が止まっている
2つ目の理由は、ターン中に斜面の下を見たまま目線が止まり、横に進むボードとの間にズレが発生するからです。
スノーボードは、自分が見ている方向に吸い込まれるように進んでいきます。
ボードは横に進みたいのに目線が止まると下方向に引っ張られ、サイドスリップ状態になってボードがズレます。
人は正面を向いた状態が自然なので、ヒールサイドでボードが回ってきたときに体の正面である下向きで目線が止まるのは当たり前のことです。
③かかと立ちの難しさ
3つ目の理由は、ヒールサイドは足首を曲げてボードを立てることが難しいからです。
カービングターンでは、ボードの両サイドのエッジを雪面に食い込ませて曲がるため、ボードを立てなければズレます。
ボードを立てるために足首の関節を使いますが、人間の骨格上、ヒールサイドは足首を曲げにくいです。
そもそもブーツを履いていなくても、かかと立ちはつま先立ちと比べて難しいです。
ブーツの紐を締めて足首がガチっと固定されることも、曲げにくい原因の1つです。
2.ヒールサイドのズレ対策5選
かかと側のターンはズレて当たり前だと理解したところで、ヒールサイドのズレ対策を5つ紹介します。
- 目線は常に進行方向
- 前の手は常にノーズの上
- 前足に体重を乗せて切り替え
- 両足のつま先を引き上げる
- 後ろの手を下げながら低くなる
イメージ図は次のとおりです。
①目線は常に進行方向
1つ目は、目線を常に進行方向を向けることです。
カービングターンでは、基本的に目線とボードの進行方向は常に同じである必要があります。
ボードの進行方向を見るだけなら簡単だと思われるかもしれませんが、実際は非常に難しいです。
先ほど説明したとおり、人は正面を向いた状態が自然なので、多くの人がターン中に横を向けず、目線が下向きで止まっています。
私は、常にボードの進行方向を見続けるため、アゴを前肩に近づけながら滑るように意識しています。
なぜ「目線」でなく「アゴ」かというと、目だけ進行方向を見ていても、顔が下を向いていれば結局ボードはズレるからです。
アゴを意識することで、顔ごと強制的にボードの進行方向に向けることができます。
ちなみにアゴを前肩に近づける姿勢はとても窮屈です。
試しにその場で正面を向いて立ち、横を向いてアゴを前肩(進行方向の肩)に付けてみてください。
違和感を感じ、首の後ろの筋が突っ張って少し痛いかもしれません。
進行方向(横)を見続けるのは、それくらい不自然で違和感があることだと知っておきましょう。
②前の手は常にノーズの上
2つ目は、前の手をノーズ上にキープしておくことです。
これは上半身を過度にひねってボードがズレるのを防ぐために行います。
先ほど説明したとおり、ヒールサイドは見えない方向に曲がっていくため、その恐怖心から上半身をひねって早くターンしがちです。
上半身を過度にひねると、エッジが雪面に食い込む前に一気にボードが回ってきて後ろ足がズレます。
そのため前の手をノーズ上にキープしておいて、上半身の過度なひねりを強制的に制限します。
これでエッジの切り替えがゆっくり丁寧になり、ズレにくくなります。
ノーズ上に手をキープすることに、先ほど紹介したアゴを前肩に近づけながら滑ることを組み合わせてみてください。
これで視界が確保できて恐怖心がなくなり、上半身の過度なひねりが減ってボードがズレなくなります。
③前足に体重を乗せて切り替え
3つ目は、エッジを切り替えるときはいったん前足に体重を乗せることです。
これで前足(ノーズ)付近のエッジが雪面に食い込み、その力を後ろ足(テール)までしっかり伝えることができます。
カービングでは、ボードのエッジをノーズからテールまで目いっぱい使うことが大切です。
もし前足の力が抜けた状態でエッジを切り替えると、エッジが食い込まず、特に硬い雪やアイスバーンでエッジが抜けてコケやすくなります。
ヒールサイドの切り替えのときに前足に体重を乗せるためには、前足のかかとを踏んで足の裏がベタっと雪面につくイメージを持つと良いです。
両足の間に直角三角形を作るイメージを持っても良いでしょう。
このとき、後ろ足を伸ばしてお尻の位置を前足寄りに移動させると前足に体重を乗せやすいです。
④両足のつま先を引き上げる
4つ目は、ターン中に両足のつま先を引き上げてしっかりボードを立てることです。
先ほど説明したとおり、人間の骨格上、ヒールサイドは足首を曲げにくいです。
だからこそ意識してブーツの中で足首を曲げて、つま先を引き上げなければボードはズレます。
特に後ろ足首を強く曲げて、つま先を引き上げてください。
なぜならカービングでズレるのはいつもテール(後ろ足)だからです。
また、つま先を引き上げるだけでなく、ターン方向に足首をひねることも有効です。
つま先を引き上げる上下の動きと、足首をひねる左右の動きを組み合わせ、立体的に関節を使うことがズレないカービングにつながります。
なお、ビンディングのセッティングを変えることで後ろ足首が劇的に曲げやすくなります。
どうしてもうまくいかない方は、以下の記事の内容を試してみてください。
⑤後ろの手を下げながら低くなる
5つ目は、ターン中に後ろの手を下げながら低くなる(しゃがむ)ことです。
先ほどターン中につま先を引き上げてボードを立てることを説明しました。
しかし今度は、ボードが立つほど体が傾いて、体とボードが離れて山側にお尻を付いてコケやすくなります。
リフトからカービングの練習をしている人を見ても、この理由でコケている人が多いです。
ターン中に後ろの手を下げながらしゃがむことで、上体が起きてボード上に体をキープでき、体とボードが近づいてバランスが取れます。
このとき後ろの手で両足の間のつま先エッジを触りにいくイメージを持つと良いです。
3.すべての動作をゆっくり丁寧に
これまでに紹介したヒールサイドの5つのズレ対策は、最初から同時にやろうとしてはいけません。
前足に体重を乗せて切り替える、ターン中につま先を引き上げる、後ろの手を下げながら低くなる、それぞれの動作を分けて1つずつゆっくり丁寧に行ってください。
そして1つできたら2つ、2つできたら3つと、動作を1つずつ加えていきます。
後は反復練習することで、ムダな動きのない正しいフォームやポジションが身につき、いつの間にか頭で考えなくても自然と体が動くようになります。
4.まとめ
この記事では、以下の内容を紹介しました。
ヒールサイドがズレやすいのは当たり前なので、その理由を理解した上でしっかり対策を立てれば驚くほどカービングしやすくなります。
この記事がカービングのヒールサイドがズレて悩んでいる人の参考になれば幸いです。
以下の記事では、劇的にカービングがしやすくなるオガサカのおすすめの板やブーツの履き方を紹介していますので、ぜひご覧ください。
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