カービング上達のためのスタンスとセッティングのコツ5選!スノーボードのビンディング調整を解説

安全と技術
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「スタンスとセッティングって何?」

「ビンディングの調整方法を教えて」

「カービングに合うセッティングは?」

 この記事では、スノーボード歴20年以上の現役インストラクターが、次のポイントを詳しく解説します。

  • スタンスとセッティングの違い
  • ビンディングとセッティングの種類
  • カービングが楽になるセッティングのコツ

 この記事を読むことで、カービングが劇的にやりやすくなるセッティングのコツを知ることができます。

 「カービングをもっと上達させたいけど、セッティングの仕方が分からない」と悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

ビンディングのセッティング

1.スタンスとセッティングの違い

 初めに「スタンス」と「セッティング」の違いを簡単に説明します。

 「スタンス&セッティング」とひとまとめに考えると混乱しがちですが、それぞれ異なるものです。

  • スタンス = 身体のこと
  • セッティング = 道具のこと

スタンス

スタンスの説明

 ボードに乗せる足の位置(足幅や角度)、構えのことを指します。
 スタンスは、身長や体格、足のサイズ、柔軟性などによって決まるため、身体を基準にした調整です。

セッティング

セッティングの説明

 ビンディングをどのように調整し、どの位置に取り付けるかを指します。
 自分のスタンスや滑り方に応じて決まるもので、道具を基準にした調整です。

スタンスによって自然に決まるのがセッティングなんだね。

スタンス&セッティングではなく、スタンス→セッティングだよ。

2.ビンディングとセッティングの種類

 ここでは、FLUX(フラックス)のストラップ型ビンディングを例に、各パーツの役割と基本のセッティングを紹介します。

ビンディングのパーツ

ビンディングのパーツ説明
  1. ベースプレート(ビンディング本体)
    ビンディングを支える土台の部分です。
  2. ディスクプレート(センターディスク)
    ビンディングの位置(角度や幅)を調整して固定する丸いパーツです。
  3. ハイバック
    ブーツのふくらはぎ部分を支える後ろのパーツです。
  4. ストラップ
    ブーツの足首とつま先を固定するパーツです。アンクルストラップ(足首)とトゥストラップ(つま先)があります。

ストラップ型以外にも種類はあるの?

ほかにはBURTONステップオンNIDECKERSUPERMATIC(ステップイン)が有名だよ。

5種類のセッティング

幅(ワイズ)

スタンス幅

 左右のビンディングの取り付け幅の調整です。

 背の高い人は幅を広げ、背の低い人は幅を狭くするのが一般的です。

角度(アングル)

 ビンディングに角度を付ける調整です。

 カービングをメインにする人は、両足の角度をノーズ方向(進行方向)に向けることが多いです。

スタンス角度(カービング)

 グラトリをメインにする人は、後足の角度をテール方向に向けるダックスタンスが一般的です。

スタンス角度(グラトリ、キッカー)

センタリング

 ビンディングをつま先寄り、またはかかと寄りに取り付ける調整です。

 足の小さい人はつま先寄りに、足の大きい人はかかと寄りに取り付けるのが一般的です。

センタリング

フォワードリーン

 ハイバックの前傾角度の調整です。

フォワードリーン

 カービングをメインにする人は、ハイバックを前傾させて足首の曲げを作ります。これでボードを立てやすくなり、ターン時のエッジグリップが向上します。

ローテーション

 スタンス角度に合わせて、ハイバックだけ回転させる調整です。

 セッティングが前向きの場合、ハイバックをボードのエッジと平行に近づけます。

ローテーション

 これでかかと側のターンのときに力が分散されず、エッジ全体に力を加えやすくなります。

たくさん調整できて迷うなぁ。

次からセッティングのコツを丁寧に説明するよ。

3.カービングが上達するセッティング

 カービングが劇的にやりやすくなるセッティングのコツを5つ紹介します。

①スタンス幅の決め方

 スタンス幅は、一般的には肩幅より少し広めが良いとされていますが、これだけでは分かりにくいですよね。

 そこで私は、以下の式を基準にしてスタンス幅を決めています。

カービングに最適なスタンス幅
身長÷3-3cm

 この式を使うことで、自分に合ったスタンス幅が簡単に計算できます。

 身長ごとの「スタンス幅早見表」も作成しましたので、ぜひ参考にしてください。

スタンス幅早見表
※身長÷3-3で計算し、小数点以下を四捨五入しています。
※この表のスタンス幅±1cmの範囲を基準としてください。
※スタンス幅の決め方は諸説あるため、正解はありません。

例えば、身長168センチの人は、スタンス幅52~54の間がおすすめです。

②スタンス角度の決め方

 カービングに取り組む前のスノーボード初心者には、以下の4つのスタンス角度がおすすめです。

  • 前21°、後0°
  • 前21°、後3°
  • 前18°、後0°
  • 前18°、後-3°

 「前足は18°~21°、後足は-3°~3°」の範囲で、「前後の差は18°~21°」が最適と考えます。

 この設定を基準に、カービングに慣れたら徐々に角度を進行方向に向けていくと、無理なく上達できます。

 例えば、「前3°→後3°→前3°」といった具合に、段階的に調整していくのが理想的です。

スタンス角度の調整方法

 カービングが上達してスピードが上がっても、進行方向を向いていれば姿勢を整えやすくなります。

 なお、ノーズ方向に向ける角度は、前足30°、後足9°くらいまでが目安です。

 この範囲内で、自分にとって最適なスタンス角度を見つけてください。

僕がA級インストラクターに合格したときは、前足27°、後足6°でした。

③センタリングの決め方

 多くの人は、ブーツのつま先とかかとの中心をボードの中心に合わせてビンディングを取り付けます。

 しかしこれでは、つま先側のターンとかかと側のターンが不均等になることがあります。

 その理由は、つま先側のターンのときに力を入れる場所はつま先ではないからです。

力を入れる場所は「指の付け根」

 つま先側のターンで力を入れるべき場所は、指の付け根(下図の赤枠)です。

 決してつま先(下図の青線)ではありません。

つま先側のターンで力を入れる場所

 線(指先)よりも面(指の付け根全体)で体重を支える方が安定するのは簡単にイメージできると思います。

 特に、親指の付け根(母指球)にしっかりと体重を乗せることで、ターンがより安定します。

 以上のことから、センタリングの決め方は以下のようになります。

× ブーツのつま先とかかとの中心をボードの中心に合わせる

〇 親指の付け根とかかとの中心をボードの中心に合わせる 

 それぞれの違いを、以下のイラストで確認します。

つま先が基準の場合

ブーツの中心で設定

 ブーツとボードの中心は合っているが、指の付け根からエッジまでが遠く、かかとからエッジまでが近い。
左右のターンが不均等

親指の付け根が基準の場合

指の付け根とかかとの中心で設定

 ブーツがつま先寄りに見えるが、指の付け根とかかとからエッジまでの距離が同じでバランスが良い。
左右のターンが均等

足のサイズに合ったセンタリングの調整

 センタリングを調整するときは、ブーツの中で親指の付け根とかかとの中心はどの位置か確認してください。

ブーツの中で足の位置を確認

 一般的に、足が小さい人はつま先寄り、足が大きい人はかかと寄りに取り付けます。

 なお、センタリングの調整は、ディスクプレートを縦向きに使う必要があります。
 ディスクプレートの使い方は後で説明します。

僕が足が小さいので、センタリングはつま先寄りMAXです。

④フォワードリーンの効果

 かかと側のターンのときにテール(後足)がずれる人は多いですが、この対策として有効なのがフォワードリーンの調整です。

 後足のハイバックを最大限に前傾させることで、かかと側のターン中にテールがずれにくくなります

フォワードリーン

かかと側は「ずれる」のが当たり前

 カービングでは、エッジを雪面に食い込ませるためにボードを立てる技術が必要ですが、骨格上の理由から、かかと側は足首を曲げるのが難しいです。

 硬いブーツが足首の動きを制限することもあって、難易度はさらにアップします。

 かかと側はテールがずれて当たり前なのです。

 そこで、後足のハイバックだけ前傾させることで、最初から足首を曲げた状態を作っておきます。

スピードに対応した姿勢

 フォワードリーンの調整には、もう1つのメリットがあります。

 進行方向(ノーズ方向)を向きやすくなることです。

 後足のハイバックを前傾させることで、後ろ足首が曲がり、膝や骨盤、さらには胸や顔までが自然に進行方向を向くようになります。

 これで視線が常に進行方向に向き、スピードに対する恐怖心がなくなります

ずれるのはテールだから「後足だけ」がポイントです。

⑤ローテーションの効果

 ローテーションの調整は、かかと側のターンのずれ対策に有効です。

 スタンス角度を変えた分だけ、ハイバックをボードのエッジと平行に回転させることで、かかと側のターン中にエッジ全体に力を入れやすくなります

ローテーション

 ただし、ローテーションについては諸説あり、効果の感じ方は人それぞれです。

 私も以前はローテーションを取り入れていました。

 かかと側のターンで反応が早く、ボードを立てやすいと感じたものの、ブーツのふくらはぎとハイバックがフィットせず違和感を覚えたため、今はやめました

 ローテーションの調整は簡単なので、一度試して合わなければ元に戻せばいいです。 

僕はローテーションを入れない派です。

4.デメリットと対策

 カービング向けのセッティングにはデメリットもあるため、理解した上で適切な対策を取りましょう。

スイッチライディングが難しくなる

スイッチランディング

 スタンス角度をノーズ方向に向け、フォワードリーンを調整すると、スイッチでの滑りが難しくなります。

 そのため、違和感が少ないようにスタンス角度は一度に変えず、少しずつ(3°ずつ)調整してください。

センタリングとスタンス幅のトレードオフ

 センタリングの設定では、ディスクプレートを縦に使用するため、スタンス幅の微調整ができなくなります。

 両者はトレードオフの関係にありますが、センタリングを最優先で設定してください。

センタリングの調整

センタリングの調整
センタリングの調整はディスクプレートをに使用する。スタンス幅の微調整ができない。

スタンス幅の微調整

スタンス幅の微調整
スタンス幅の微調整はディスクプレートをに使用する。センタリングの調整ができない。

ドラグの解消法

 センタリングを行った結果、ボードからはみ出たブーツが雪面に擦れる「ドラグ」という現象が発生することがあります。

 ドラグが気になる場合は、以下の対策が有効です。

  • スタンス角度を進行方向に向け、ブーツが板幅に収まる(斜めになる)ように調整する。
  • 幅の広いワイドボードに乗り換える。
  • ドラグダケなどのドラグ解消アイテムを使う。
    ドラグダケ…ボードとビンディングの間に挟むことでドラグを解消する厚さ11mm、重さ168gの樹脂製プレート
ドラグダケ(取り付け前)
ドラグダケ(取り付け後)

最初は不安だったけど、意味が分かったらセッティングが怖くなくなったよ。

いろいろ試して、自分にぴったりのセッティングを見つけよう!

5.おわりに

 この記事では、以下のポイントを紹介しました。

  • スタンスとセッティングの違い
  • ビンディングとセッティングの種類
  • カービングが楽になるセッティングのコツ

 正しいセッティングを理解することで、カービングの上達が早くなります。

 逆に、間違ったセッティングを続けると滑りにくくなったり、変なクセがついて上達が遅れてしまいます。

 セッティングには個人差があり、正解は1つではないので迷って当然です

 この記事が「カービングをもっと上達させたいけど、セッティングに悩んでいる」という人の参考になれば幸いです。

 以下の記事では、カービングに適したスノーボードブーツの履き方や、おすすめの板について紹介していますので、ぜひご覧ください。

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